規格準拠がなぜ重要か
粉体材料の測定において、JIS規格・ISO規格・ASTM規格への準拠は単なる形式的要件ではありません。国際的なサプライチェーンの中で製品の品質保証を確実に行い、取引先との信頼関係を構築するための基盤です。
規格準拠が求められる具体的な場面は多岐にわたります。
- 国際貿易 — 海外顧客に納品する際、相手国の採用規格に基づいた試験データの提出が契約条件に含まれるケースが増えています。特にカーボンブラックやフィラー材料の分野では、北米向けにはASTM規格、欧州向けにはISO規格のデータが要求されることが一般的です。
- 顧客仕様への対応 — 自動車メーカーや電池材料メーカーなど大手顧客からは、特定規格に準拠した測定方法での品質データ提出が求められます。規格外の方法で得たデータは受け入れられないことが多く、受注機会の損失につながります。
- 規制対応 — 特定の産業分野では法規制により、認定された試験規格に基づく測定が義務付けられています。
- データの比較可能性 — 異なる試験所間でデータを比較・検証するためには、同一の規格に基づいた測定手法が不可欠です。ラウンドロビン試験やラボ間比較においても規格準拠が前提条件となります。
このように粉体測定における規格準拠は、品質管理体制の信頼性を左右する重要な要素です。以下では、粉体測定に関する主要規格の概要と、適切な測定装置の選定方法について詳しく解説します。
粉体測定に関する主要規格の概要
粉体材料、特にカーボンブラック試験に関連する規格は、日本(JIS)、米国(ASTM)、国際(ISO)の3つの体系に大別されます。それぞれの規格は歴史的経緯や測定対象の違いを反映しており、試験条件や判定基準に差異があります。
JIS K 6217 シリーズ(日本産業規格)
JIS K 6217は、ゴム用カーボンブラックの試験方法を規定する日本産業規格です。吸油量(OAN/DBP吸収量)、比表面積、粒子径分布など、カーボンブラックの物理的特性を網羅的に評価するための手法が体系化されています。JIS規格は日本国内の取引において最も広く参照される規格であり、国内メーカー間の品質比較の共通基盤として機能しています。
主な関連規格として、JIS K 6217-4(DBP吸収量の測定)やJIS K 6217-7(個粒硬度の測定)などがあります。
ASTM D2414 / D3493(米国試験材料協会規格)
ASTM D2414は、カーボンブラックのDBP吸油量を測定するための国際的に最も広く引用される規格の一つです。アブソプトメーター法によるトルク測定に基づき、カーボンブラックの構造(ストラクチャー)を定量的に評価します。ASTM D3493は圧縮サンプルに対する同測定法を規定しており、製造工程での変動を排除した評価が可能です。
北米を中心に、タイヤメーカーやゴム製品メーカーの多くがASTM規格による試験データを標準仕様として採用しています。
ISO 19246(国際標準化機構規格)
ISO 19246は、ゴム配合用カーボンブラックのボイドボリューム(空隙容積)をアブソプトメーター法で測定する国際規格です。ISO規格はJIS・ASTMの双方を参照しながら国際的な統一を図る位置づけにあり、欧州やアジアの多くの国で採用が進んでいます。
以下の表は、主要規格と試験項目、対応するあさひ総研製品の関係を整理したものです。
規格番号 | 規格体系 | 試験項目 | 試験方法 | 対応製品 |
|---|---|---|---|---|
JIS K 6217-4 | JIS | DBP吸油量 | アブソプトメーター法 | |
ASTM D2414 | ASTM | DBP吸油量(未圧縮) | アブソプトメーター法 | |
ASTM D3493 | ASTM | DBP吸油量(圧縮サンプル) | アブソプトメーター法 | |
ISO 19246 | ISO | ボイドボリューム | アブソプトメーター法 | |
JIS K 6217-7 | JIS | 個粒硬度 | 圧縮破壊試験 | |
ASTM D5230 | ASTM | 個粒硬度 | 圧縮破壊試験 | |
JIS K 5600-2-5 | JIS | 分散度(つぶの細かさ) | グラインドゲージ法 | |
ASTM D1210 | ASTM | 分散度(Fineness of Grind) | グラインドゲージ法 | |
ISO 1524 | ISO | 分散度 | グラインドゲージ法 |
規格選定のポイント
どの規格に準拠すべきかは、事業環境や取引先の要求に応じて判断する必要があります。以下の3つの観点から検討することを推奨します。
輸出先・取引先の地域
製品の主な輸出先が北米であればASTM規格、欧州・アジアであればISO規格が優先されます。日本国内取引が中心の場合はJIS規格が基本ですが、JIS規格の多くはISO規格と整合化が進んでおり、JIS準拠であればISO要件を満たせるケースも少なくありません。
顧客仕様書の確認
最も確実な方法は、取引先の仕様書や購買仕様に記載された規格番号を確認することです。同じ「吸油量」の測定であっても、ASTM D2414とJIS K 6217-4では試料の前処理条件に微細な差異がある場合があり、規格番号の取り違えは測定値の不一致を引き起こす原因となります。
試験方法の同等性
JIS・ISO・ASTMの間で試験方法が技術的に同等である場合もありますが、完全に同一ではない点に注意が必要です。規格間の対応関係を正確に把握し、必要に応じて両規格での測定を並行して実施する体制を構築することが理想的です。
重要:規格間の試験条件の微妙な差異(試料量、滴下速度、トルク閾値など)が測定結果に影響を与える場合があります。複数規格への対応が必要な場合は、各規格の要求事項を個別に確認し、装置パラメータを規格ごとに設定・保存できる測定装置の導入を検討してください。あさひ総研のS-500 吸油量測定装置は、JIS・ASTM・ISOの各規格に対応した測定条件のプリセット機能を備えています。
あさひ総研の規格準拠ソリューション
株式会社あさひ総研は、粉体測定装置の専門メーカーとして、主要な国際規格準拠を前提とした装置設計・開発を行っています。各製品がカバーする規格範囲は以下のとおりです。
製品名 | 型番 | 主な用途 | 準拠規格 |
|---|---|---|---|
S-500 | DBP吸油量・ボイドボリューム測定 | JIS K 6217-4 / ASTM D2414 / ASTM D3493 / ISO 19246 | |
AHT1850 | カーボンブラック個粒の圧縮強度評価 | JIS K 6217-7 / ASTM D5230 | |
AGS-106 | 塗料・インキの分散度評価 | JIS K 5600-2-5 / ASTM D1210 / ISO 1524 |
いずれの装置も、規格で規定された試験条件を忠実に再現できるよう設計されています。特にS-500 吸油量測定装置は、トルク検出精度やDBP滴下速度の制御において規格要求を十分に満たす性能を有しており、国内外の多くの試験所で採用されています。
また、AGS-106 グラインドゲージスキャナは、従来の目視判定に依存していたグラインドゲージ測定を画像解析により自動化・定量化した装置であり、規格準拠と測定再現性の両立を実現します。
ASTM委員会への参画
あさひ総研は、規格準拠製品の提供にとどまらず、規格策定プロセスそのものにも積極的に参画しています。2016年にオーストリア・ウィーンで開催されたASTM D24.11(カーボンブラック小委員会)の会合に出席し、吸油量測定装置に関する技術提案を行いました。
このような規格策定団体への直接的な関与を通じて、規格要求事項の最新動向を把握するとともに、装置開発へのフィードバックを得ています。ASTM委員会への参画は、あさひ総研の測定装置が単に規格に適合するだけでなく、規格の意図を深く理解した設計思想に基づいていることの証左です。
規格は定期的に改訂されるため、装置メーカーが規格動向を継続的にモニタリングし、ファームウェアや測定プロトコルの更新を適時提供できることは、ユーザーにとって大きな安心材料となります。